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不動産競売の取説(物件の調べ方・入札・開札・落札後の代金納付と引渡し)
裁判所の不動産競売で家や土地を買うまでの流れを順番に整理しました。物件の調べ方、保証金と入札書の出し方、開札と売却許可決定、代金の納付と登記、住んでいる人がいるときの引渡命令まで扱い、ふつうの売買と違う注意点もまとめています。
- 対象者
- 競売物件を自宅や投資用に買ってみたい人 ほか
- 難易度
- 経験者向け
- 所要時間
- 東京地裁の例で、資料の公開から開札まで約1か月、落札から代金納付まで約1〜2か月。明け渡してもらう場合はさらに数か月
- 最終確認
- 2026年10月30日
これは何の取説?
裁判所の不動産競売で、家・マンション・土地を買うまでの流れをまとめた取説です。競売は、借金を返せなくなった人の不動産を裁判所が売り、その代金を貸した側に配る手続きです。物件の情報は裁判所のサイト「BIT」で公開され、誰でも入札に参加できます。
相場より安く買えることがある一方で、中を見られない、品質の欠陥があっても責任を問えない、住んでいる人の退去を自分で進める必要がある、といったふつうの売買にはない負担があります。
この取説では、物件の調べ方、保証金と入札書の出し方、開札、代金の納付と登記、引渡しまでを順に説明します。
こんな人向け
- 競売物件を自宅や投資用に買ってみたい人
- BITで物件を見つけたが、手続きの順番が分からない人
- 入札する前に、費用やリスクを洗い出しておきたい人
- 落札したあと、代金の納付や明け渡しで何をすればよいか知りたい人
ふつうの売買で買う場合は「中古マンション購入の取説」、貸し出して収入を得る場合は「小規模大家の取説」も参考にしてください。
まず知っておくこと
最終確認日は2026年10月です。この記事は一般的な情報で、個別の物件についての助言ではありません。
日数・提出方法・必要書類の細かな扱いは、物件を担当する地方裁判所ごとに違います。この記事で「東京地裁の例」としている部分は、ほかの裁判所でも同じとは限りません。入札の前に、必ずその物件の公告書と、担当裁判所の案内を確かめてください。
2026年10月時点では、入札書は裁判所に持参するか郵送で出します。民事執行の手続きのオンライン申立ては、裁判所の案内では令和10年(2028年)6月までに対象となる予定です。
必要なもの
- BITで印刷した物件の資料(公告書・3点セット)
- 入札書と、保証金の振込を証明する書類などの一式(名前や様式は裁判所ごとに違う。担当裁判所の窓口でもらうか、BITの案内に従って入手)
- 住民票(発行から3か月以内、マイナンバーの記載がないもの)。法人なら資格証明書
- 暴力団員等に当たらないことの陳述書
- 保証金(原則として売却基準価額の2割)を振り込めるお金
- 残りの代金を払うお金、または住宅ローンの事前の内諾
- 登録免許税・郵便切手・不動産取得税・リフォームや引越しの費用の見込み
- 代理人に頼む場合は委任状
手順
競売の仕組みと、ふつうの売買との違いを知る
競売では、売主は裁判所で、不動産会社が仲介するわけではありません。値段の交渉はなく、いちばん高い金額で入札した人が買う権利を得ます。
ふつうの売買と比べた主な違いは次のとおりです。- 原則として建物の中を見られない
- 雨漏りなどの品質の欠陥があっても、売主に修理や代金の減額を求められない(民法568条4項)
- 住んでいる人や置いてある荷物の片づけは、買った人が自分で進める
- 代金は一括で、決められた期限までに納める
- 一度出した入札は、取り消しも訂正もできない
こうした負担を見込んだ上で、安く買える分が見合うかを考えます。
BITで物件を探し、3点セットを読み込む
裁判所のサイト「BIT(不動産競売物件情報サイト)」で、地域や種類から物件を探せます。入札期間が始まる少し前(東京地裁では通常15日前)から、物件ごとに次の資料を見られます。
- 物件明細書:買った人が引き継ぐ権利(借りている人の権利など)や、土地を使う権利の有無が書かれている
- 現況調査報告書:裁判所の執行官が現地で調べた結果。誰が住んでいるか、建物の状態、写真など
- 評価書:評価人が出した物件の評価額と、その理由
とくに物件明細書の「買受人が負担することとなる他人の権利」の欄と、現況調査報告書の「占有者」の記載は必ず読みます。分からない言葉はBITの用語集で調べられます。
現地を外から見て、追加の費用を洗い出す
資料の写真や記載が古いこともあるので、現地に行って外から確かめます。住んでいる人がいる場合は、勝手に敷地に入ったり、中を見せるよう求めたりしないでください。
裁判所の内覧の制度は、差し押さえた債権者の申立てがあり、裁判所が命じた場合に限って行われます。住んでいる人が応じなければ行われないこともあり、入札したい人が自由に中を見られる仕組みではありません(民事執行法64条の2)。
次の費用は、入札額を決める前に見込んでおきます。- マンションの滞納している管理費・修繕積立金:買った人が管理組合から請求を受けることがある(区分所有法8条)。管理会社や管理組合に聞いても、教えてもらえないこともある
- 明け渡しにかかる費用:話し合いで済まなければ、強制執行の予納金や荷物の運び出し・保管の費用
- リフォーム費用:中を見ていないので、多めに見ておく
- 登録免許税・不動産取得税などの税金
入札額を決め、お金の手当てをする
公告書には「売却基準価額」と「買受可能価額」が書かれています。入札できるのは、買受可能価額(売却基準価額の8割)以上の金額です(民事執行法60条)。
入札額は、同じような物件の相場から、前の手順で見込んだ費用と、中を見られないことなどのリスクの分を差し引いて考えます。人気の物件は売却基準価額を大きく上回ることもあるので、自分が出せる上限を先に決めておきます。
住宅ローンを使うなら、入札の前に金融機関に相談しておきます。競売物件への融資を扱わない金融機関もあり、落札してから探すと代金の納付期限に間に合わないおそれがあります。保証金を振り込み、入札書類をそろえる
入札する前に、買受申出保証(保証金)を納めます。額は原則として売却基準価額の2割で、正確な額は公告書に書かれています。
ふつうは裁判所の指定する口座に振り込み、振込の控えを裁判所の決まった用紙に貼って出します。用紙の名前は「入札保証金振込証明書」「保管金受入手続添付書」など裁判所ごとに違い、振り込む時期にも決まりがあります。銀行などとの支払保証委託契約による方法もあるので、公告書と担当裁判所の案内に従ってください。
ほかに必要な書類は、東京地裁の例では次のとおりです。- 入札書(入札額・物件の番号・名前などを書く)
- 住民票(法人は資格証明書)
- 暴力団員等に当たらないことの陳述書(民事執行法65条の2):東京地裁の案内では、入札書ごとに必要で、出していないと入札は無効。あとから出しても補えない
- 代理人が入札する場合は委任状
書き損じは無効のもとになります。担当裁判所の記載例を見ながら書きます。
入札期間内に、入札書を出す
入札は、決められた入札期間(東京地裁では通常8日間)の間に、担当裁判所の執行官に出します。持参か郵送で、郵送の場合は期間内に届く必要があります。
東京地裁の例では、入札書だけを専用の封筒に入れて封をし、その封筒とほかの書類をまとめて別の封筒に入れ、郵便または信書便で送ります。封筒の入れ方や送り先は裁判所ごとに決まりがあるので、公告書と案内に従ってください。
一度出した入札は、取り消しも書き直しもできません。金額は出す前にもう一度確かめます。開札で、落札したかどうかを確かめる
入札期間のあと、公告書に書かれた開札期日に、執行官が入札書を開けて、いちばん高い人を決めます。結果は担当裁判所の案内やBITで確かめられます。
- いちばん高い金額を書いた人が「最高価買受申出人」になる
- 同じ金額が並んだときは、その場での追加の入札やくじで決める
- 2番目の人は、条件を満たせば「次順位買受けの申出」ができる。最高価の人が代金を納めなかったときに、代わりに買える可能性がある(民事執行法67条)
落札できなかった人の保証金は、開札のあとに返還の手続きがとられます。返し方は担当裁判所の案内を確かめます。
期間入札で誰も入札しなかった物件は、そのあと「特別売却」として売りに出されることがあります。東京地裁の例では、買受可能価額で、先着順で申し込めます。売却許可決定が出て、確定するのを待つ
開札から1〜3週間ほどあとの売却決定期日に、裁判所が売却を許すかどうかを決めます(民事執行法69条)。日数は裁判所によって違います。
許可の決定には、関係者が不服を申し立てる(執行抗告)期間があり、申し立てがなければ1週間ほどで確定します。決定は確定するまで効力が生じません(民事執行法74条5項)。
確定すると、裁判所書記官が代金の納付期限を決め、「代金納付期限通知書」が届きます(民事執行法78条1項)。東京地裁では、期限は確定からおよそ1か月以内です。期限までに残りの代金を納め、登記してもらう
納める額は、落札額から保証金を差し引いた残りです。一括で、期限までに納めます。
期限までに納めないと、売却許可決定は効力を失い、保証金は返ってきません(民事執行法80条1項)。
代金を納めた時点で、不動産はあなたのものになります(民事執行法79条)。所有権の移転登記や、前の抵当権などの登記を消す手続きは、裁判所書記官が法務局に頼んでくれます(民事執行法82条1項)。そのための登録免許税と郵便切手は買った人の負担で、代金と一緒に納めます。税額は固定資産評価額をもとに計算し、税率は原則2%で、個人が住むための家屋で要件を満たすと軽減されます(国税庁 No.7191。2026年10月時点では令和9年3月末までの取得が対象)。
住宅ローンを使う場合は、代金を納める前に、金融機関と一緒に「民事執行法82条2項の申出」をします。抵当権の設定の登記を同時に進めるための手続きです。BITの案内では納付期限の1週間前ごろまでが目安で、東京地裁は代金納付日の5日前(土日・休日を除く)までです。
あとで不動産取得税の通知も届きます。住んでいる人に、明け渡してもらう
前の持ち主や家族が住んでいる場合は、まず手紙などで連絡し、退去の時期を話し合います。合意できたら、日付や荷物の扱いを書面に残します。
話し合いで進まないときは、裁判所に引渡命令を申し立てます。期限は代金を納めた日から6か月以内です(民事執行法83条2項)。東京地裁の例では、申立て → 発令 → 相手への送達 → 1週間の不服申立て期間 → 確定 → 執行文の付与と送達証明、と進み、そのあと執行官に強制執行(明渡しの執行)を申し立てます。強制執行には予納金がかかります。
借りて住んでいる人がいる場合は、物件明細書で扱いを確かめます。- 抵当権より前からの賃貸借など、買った人に主張できる権利がある人:賃貸借を引き継ぐことになり、すぐには出てもらえない
- 抵当権に対抗できない賃貸借で建物を使っている人のうち、競売の手続きが始まる前から使っている人など:買った時から6か月は明け渡しを待つ必要がある(民法395条)。この場合、引渡命令の申立て期限は9か月以内
残っている家具などの荷物は前の持ち主のものです。合意や裁判所の手続きによらずに捨てたり売ったりすると、トラブルや損害賠償のもとになります。
注意点
- 入札は取り消しも訂正もできない。金額の桁や物件の番号は、出す前に複数回確かめる
- 陳述書や住民票がないなど書類に不備があると、入札は無効になる
- 代金を期限までに納めないと、保証金は返ってこない
- 中を見られず、品質の欠陥について責任を問えない。修理費は多めに見込む
- 住んでいる人がいる物件は、退去まで時間と費用がかかる。自分で鍵を換えたり荷物を出したりしない
- 「必ず安く買える」「代わりに入札するので手数料を」などの勧誘は、内容と相手を慎重に確かめる。弁護士・司法書士・宅地建物取引業者かどうかも確認する
- 日数・提出方法・必要書類は裁判所ごとに違う。公告書と担当裁判所の案内が最優先
- 農地は、原則として農業委員会などの「買受適格証明書」がないと入札できない
コツ
- 最初は、空き家で権利関係が単純な物件から検討すると、引渡しの負担が小さい
- BITでは過去の売却結果も見られるので、似た物件がいくらで落札されたかを入札額の参考にする
- 入札書を出す前に、担当裁判所の窓口や執行官室に、書き方や送り方の疑問を聞いておく
- 落札したら、代金納付・登記・ローン・明け渡しの予定を一枚の表にまとめ、期限を逃さない
- 明け渡しや権利関係が複雑な物件は、弁護士や司法書士に早めに相談する
よくある質問
Q競売物件は、誰でも入札できますか?
原則として誰でも入札できます。ただし、暴力団員等に当たらないことの陳述書が必要で、該当する人は買えません。債務者本人も入札できません。農地は、農業委員会などの買受適格証明書がある人に限られます。
Q入札の前に、建物の中を見ることはできますか?
原則としてできません。内覧の制度はありますが、差し押さえた債権者の申立てがあり、裁判所が命じた場合に限られ、住んでいる人が応じないと行われないこともあります。現況調査報告書の写真や記載と、外からの確認で判断することになります。
Q落札できなかったら、保証金は戻りますか?
戻ります。開札のあとに返還の手続きがとられます。返し方や時期は担当裁判所の案内を確かめてください。一方、落札したのに代金を納めなかった場合は、保証金は返ってきません。
Q住宅ローンで代金を払えますか?
払えます。金融機関と一緒に、代金を納める前に「民事執行法82条2項の申出」をして、抵当権の登記を同時に進めます。ただし競売物件に融資しない金融機関もあり、納付期限は東京地裁で確定から約1か月と短いので、入札の前に相談しておくことが大切です。
Q前の持ち主が出ていってくれないときは、どうすればよいですか?
まずは話し合いを試み、進まなければ裁判所に引渡命令を申し立てます。期限は代金を納めた日から6か月以内(借りている人が明け渡しを待ってもらえる場合は9か月以内)です。命令が確定したら、執行官に強制執行を申し立てます。自分で鍵を換えたり荷物を出したりするのはやめてください。
まとめ
競売は相場より安く買えることがある一方、中を見られない、品質の欠陥の責任を問えない、明け渡しを自分で進めるといった負担があります。BITで3点セットを読み、現地と追加費用を確かめてから入札額を決めます。保証金と書類をそろえて期間内に入札し、落札したら売却許可決定の確定を待って期限までに代金を納めます。住んでいる人がいれば話し合い、進まなければ6か月以内に引渡命令を申し立てます。細かな扱いは公告書と担当裁判所の案内で確かめます。
参考リンク
この取説はどうでしたか?
みんなの取説 torisetsu.jp / https://torisetsu.jp/manual/real-estate-auction-guide/
作成日:2026年11月6日 ※内容は更新されることがあります。最新版は上のURLで確認できます。一般的な情報であり、医療・法律・お金などの判断は専門家や公式窓口にご相談ください。
この取説への質問
取説の内容について分からないことを質問できます。作者が回答します。
まだ質問はありません。
