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法人の節税の取説(手残りで考える・役員報酬・共済・設備投資・決算前の進め方)
会社の節税を、税金が減るもの・払う時期がずれるもの・経費の取りこぼしを防ぐものに分けて整理。役員報酬の決め方、共済や保険の解約のタイミング、設備投資の制度、やってはいけないこと、決算前の段取りまでまとめました。
- 対象者
- 中小企業の経営者や、経理を任されている人 ほか
- 難易度
- 経験者向け
- 所要時間
- 年間の予定づくりに数日、決算前の検討に約3か月
- 最終確認
- 2026年10月29日
これは何の取説?
会社(法人)の税金の負担を、法律の範囲で軽くするための考え方と段取りをまとめた取説です。ゴールは「納める税金を最小にすること」ではなく、「税金を払ったあとに会社と経営者の手元に残るお金(手残り)を大きくすること」に置きます。
節税策は、効き方で3種類に分けて見ると判断しやすくなります。税額そのものが小さくなるもの、税金を払う年があとにずれるもの、本来の経費の計上もれを防ぐものです。
率・上限額・適用期限は税制改正のたびに変わるので、ここでは仕組みと順番を中心に書いています。数字は国税庁などの公式と、担当の税理士で確かめてください。
こんな人向け
- 中小企業の経営者や、経理を任されている人
- 決算が近づき、何から手をつければよいか迷っている人
- 共済・保険・設備の営業で「節税になります」と言われ、本当か確かめたい人
- 税理士との打ち合わせの前に、聞きたいことを整理したい人
会社員や個人事業主の節税は「節税の取説(合法的な控除・制度を知って、申告で漏らさない)」、一人や家族で運営する小さな会社は「マイクロ法人を作って節税する取説」も参考にしてください。
まず知っておくこと
最終確認日は2026年10月です。この記事は一般的な情報で、あなたの会社への個別の助言ではありません。効果は業種・利益・資金繰り・取引の中身によって違い、得になるとは限りません。
覚えておきたいのは、経費を増やして減る税金は、使ったお金の一部にすぎないという点です。説明のために税率を3割と仮定すると、100万円を使って軽くなる税金は30万円ほどで、残りの70万円ほどは会社から出ていったままです。
もう一つは、払う時期をずらすタイプの節税は、あとで利益として返ってくることです。税金が消えるわけではありません。
参考にしたのは、民間の税理士法人グループが公開している2026年10月版の資料の一般的な部分です。制度の中身は、国税庁などの公式ページで確かめています。
必要なもの
- 前期の決算書と法人税の申告書の控え
- 直近の月までの試算表
- 役員報酬を決めたときの株主総会などの議事録
- 出張旅費・社宅・慶弔などの社内規程(あれば)
- 加入中の共済や保険の契約内容が分かる書類
- 今後の設備投資の予定と見積書
- 税理士に聞きたいことのメモ
手順
合法な節税と、そうでないものの境目を知る
税法には、条件を満たした会社が使える控除や特例がたくさんあります。これを条件どおりに使い、根拠となる書類を残しておくのが節税です。調査で聞かれたときに、きちんと説明できる状態にしておくことが欠かせません。
一方、取引の形だけを整えて、実際の事業の目的がないまま税負担を減らそうとするやり方は、租税回避として扱われることがあります。同族会社では、税務署が通常の取引に置き換えて税額を計算し直す規定もあります(法人税法132条など)。
さらに、売上を抜く、架空の経費を載せるといった行為は脱税で、犯罪になります。
判断に迷う手法は、採用しない方が安全だと考えてください。節税策を「効き方」で3つに仕分ける
勧められた方法がどれに当たるかを確かめると、期待しすぎを防げます。
- 税額そのものが小さくなる:賃上げや設備投資にともなう税額控除、規程にもとづく出張の日当・社宅・福利厚生のように、受け取る側にも課税されない支給など。多くは人件費や投資の支出が前提になる
- 払う年があとにずれる:経営セーフティ共済、法人保険、設備の即時償却、短期前払費用など。いま経費になる分、解約・満了・売却の年に利益が戻るので、合計の税額はふつう変わらない
- 経費の取りこぼしを防ぐ:まだ払っていないが確定している費用、使わなくなった設備の処理、修理代の区分など。新しくお金を使う必要はない
期の始めに、期限のある手続きを予定表に入れる
節税の多くは、決算月になってからでは手遅れです。期が始まったら、次のことを年間の予定表に書き込みます。
- 役員報酬の額:原則として期首から3か月以内に決める
- 役員賞与を出す場合:税務署への事前確定届出給与の届出(期限は国税庁 No.5211 で確認)
- 消費税の簡易課税を選ぶ・やめる場合:その課税期間が始まる前日までに届け出る(No.6505)
- 減価償却の方法を変える場合:新しい方法を使う期の前に承認申請が必要
- 設備投資の予定:使う制度によっては、取得の前に計画の認定などの準備がいる
届出の様式は国税庁のウェブサイトから入手できます。
決算書に、取りこぼしている経費がないか点検する
お金を使う前に、いまの経理を見直します。主な点検先は次のとおりです。
- 期末時点で支払う義務が決まっている費用は、まだ払っていなくても当期の経費にできる(給与の締め後の分、未払いの光熱費など)。ただし、金額の見込みだけのものは対象外
- もう使わず、今後も使う予定のない設備は、捨てていなくても除却損を計上できる場合がある。現状の写真や社内の決裁記録を保存しておく
- 在庫の値下がりだけでは評価損にならない。災害で傷んだ、型落ちで売れなくなったなど、はっきりした事実が要る
- 登記にかかった税金など、資産の取得価額に含めず経費にできる費用がある
- 修理代は、元に戻す部分と性能を上げる部分で扱いが違う。業者には工事ごとに分けた見積書を頼む
細かな条件は法人税基本通達に定められています。
役員の給与は、決めた形どおりに払う
役員に払う給与が会社の経費になるのは、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに当たる場合です(国税庁 No.5211)。業績連動給与は要件が厳しく、中小企業で使える場面は限られます。
定期同額給与は、毎月の支給額をそろえるやり方です。額の見直しは原則として期首から3か月以内に行い、期の途中で上げた分は経費として認められません。業績が大きく悪化した場合の減額などは例外ですが、単に資金が苦しい、目標に届かない、という理由では足りません。
役員賞与は、時期と金額を前もって税務署に届け、その内容どおりに払います。届け出た額と違う額を払うと、原則としてその全額が経費になりません(国税庁の質疑応答事例)。
仕事の中身や同規模の会社と比べて高すぎる部分も経費になりません。家族を役員にするときは、実際に働いていて、額が見合っていることが条件です。
役員報酬を増やすと会社の税金は減りますが、本人の所得税・住民税や社会保険料は増えます。会社と個人を合わせた手残りで比べます。日当・社宅・福利厚生は、社内規程から整える
役員と従業員の全員を対象にした規程をつくり、そのとおりに運用すると、会社の経費になり、受け取る人にも課税されない形にできる場合があります。
- 出張の日当:役職などに応じた額を規程で決める。法律に上限額の定めはなく、社内のバランスや同業他社と比べて妥当かで判断される。出張の報告書など、実際に出張した記録を残す
- 社宅:会社が借り主となって契約し、本人から一定以上の家賃を受け取る。受け取る額が基準に届かないと、差額は給与として扱われる。基準の計算方法は役員と従業員で異なる(国税庁 No.2600・No.2597)
- 福利厚生:全員が利用できること、常識的な金額であること、現金ではなく物やサービスで提供すること。一部の人だけが対象だと給与になる
社会保険料の計算では、社宅も報酬として数えられる仕組みがあります。保険料まで下がるとは限らないので、社会保険労務士にも確認します。
払う時期がずれる節税は、解約する年を先に決める
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、毎月の掛金を会社の経費にでき、解約したときに戻るお金は、その年の利益になります。本来の目的は、取引先が倒産したときに資金を借りられることです。加入から日が浅いうちに解約すると戻る額が掛金を下回り、2024年10月以降に解約して入り直した場合は、一定期間の掛金が経費になりません(中小機構の解約の案内)。
法人保険は、解約したときに戻る割合によって、払った保険料のうち経費にできる部分が変わります。まず保障が本当に必要かを考えます。
この種の方法は、役員の退職金を払う年や、大きな修繕・設備投資をする年のように、経費がふくらむ年に戻りを当てることで初めて意味を持ちます。逆に、もうかっている年に戻ってくると、その分にそのまま税金がかかります。払い込んだお金は当面引き出せないので、運転資金を圧迫しない範囲にとどめます。
航空機などのリース事業への出資も同じ仲間で、元本の保証はなく、途中でやめられないのがふつうです。設備投資と賃上げの制度は、条件と順番を確かめる
もともと必要な投資なら、制度を使うことで負担を軽くできます。
- 少額減価償却資産の特例:中小企業者等が買った一定額未満の資産を、年間の合計額の範囲内で、使い始めた期に一度に経費にできる(国税庁 No.5408)。対象となる金額は令和8年度の改正で見直されたので、買った日の基準で確かめる
- 中小企業経営強化税制:経営力向上計画の認定を受けた設備について、即時償却か税額控除を選べる(No.5434)。認定と取得の順番に決まりがあるため、買う前に中小企業庁の案内と税理士で確認する
- 中小企業投資促進税制:一定の機械などが対象で、特別償却か税額控除を選ぶ(No.5433)
- 賃上げ促進税制:前の年度より給与の総額が一定以上増えた場合に、増えた額の一部を法人税から差し引ける(No.5927)。申告書に明細書を付けることが条件
即時償却は、次の年以降の償却費を前倒しで使うだけなので、税金の合計は大きく変わりません。税額控除も、支出した額がそのまま戻るわけではなく、増えた額の一部が差し引かれる仕組みです。
決算期・消費税・会社の形を変えるのは、事業上の理由があるときに
決算期を動かすと、利益が大きく出そうな時期の前で期を締め、次の期で手を打つ余裕が生まれます。ただし、それだけで税金が軽くなるわけではありません。変更した期は1年より短くなり、年単位の枠が月数で割り引かれるため、損をすることもあります。
消費税の簡易課税は、一定の売上規模以下の会社が選べる計算方法で、一度選ぶと原則2年は続けます。設備投資で消費税が戻る見込みのある年には不利になりやすいので、事前に比べます(No.6505)。
会社を分ける、持株会社をつくる、資産を管理する会社をつくる、といった見直しは、事業の管理や承継など本来の目的があることが前提です。人や拠点、意思決定の実態がないと、税務上認められないおそれがあります。新しい会社でも消費税の免除を受けられない場合が多い点にも注意し、税理士・司法書士・社会保険労務士と一緒に数年単位で検討します。決算前の段取り:見込む・比べる・そろえる・届ける
決算の3か月ほど前から、次の順に進めます。
- 見込む:最新の試算表をもとに、今期の利益と税額、資金の残り方を予想する。試算表の数字が正確であることが出発点
- 比べる:候補にした対策ごとに、手残りがどう変わるか、資金が足りるか、あとで利益が戻るか、調査で根拠を示せるかを並べる。何もしないという案も比べる
- そろえる:決算月までに、規程・契約書・議事録・届出の控え・写真などの記録を用意する。従業員に決算賞与を出すなら、期末までに一人ひとりへ金額を伝え、期末の翌日から1か月以内に支払う(国税庁 No.5350)
- 届ける:申告書には、使った特例や控除の明細書と適用額明細書を付ける。付け忘れると適用されない制度がある。申告期限は原則として決算日の翌日から2か月以内
申告が終わったら、来期の役員報酬や設備投資、共済を解約する年の計画に反映させます。
注意点
- 売上の除外、実体のない経費、今期の売上を来期に回す処理、私的な買い物の経費化は節税ではない。隠したり偽ったりすると重い加算税(重加算税)や延滞税の対象になり、悪質なら刑事罰もありうる(国税通則法など)
- 期の途中の役員報酬の増額分や、届出と違う額で払った役員賞与は、経費として認められない
- 働いていない家族への給与や、相場より高すぎる報酬は経費にならない
- 払う時期をずらす方法は、戻ってくる年の計画とセットで考える
- 家賃などを1年分まとめて前払いする方法(短期前払費用)は、毎期同じ処理を続けることが条件で、利益の多い年だけ使うことはできない(国税庁 No.5380)
- 「節税になる」という理由だけで保険・リース・設備を買うと、手元資金が減り、元本割れや途中でやめられないリスクを抱える
- 率・上限・期限は毎年変わる。実行の前に、税理士と国税庁などの公式情報で最新の内容を確認する
コツ
- 候補の対策を一覧にし、「どのタイプか」「お金が出ていくか」「いつ利益が戻るか」を書き並べると、比べやすい
- 期限のある届出は、期の初めにまとめて予定表へ入れておく
- 取引先との会食は、日付・相手の名前と関係・人数・金額・店名を残しておくと、条件内の飲食費を交際費から外せる場合がある(国税庁 No.5265)
- 税理士には、減る税額だけでなく、資金繰りへの影響と、戻りの年まで含めた試算を頼む
- 税金を払って利益を残すことも、純資産を厚くし、借入れや次の投資をしやすくするという意味がある
よくある質問
Q利益が出たら、経費を使い切ったほうが得ですか?
たいていは損になります。使ったお金のうち税金として戻ってくるのは一部で、残りは会社の外に出ていきます。もともと必要な支出を、条件のよい時期や方法で行う、という順番で考えてください。
Q経営セーフティ共済は、掛けた分の税金がなくなる制度ですか?
なくなるのではなく、税金を払う年が後ろにずれる制度です。解約して戻るお金はその年の利益になるので、経費の多い年に解約を合わせることが大切です。早い時期の解約は戻る額が掛金を下回ります。最新の条件は中小機構の案内で確認してください。
Q決算の直前に、1年分の家賃や保険料を払えば経費になりますか?
1年以内に受けるサービスの代金を、毎期続けて同じ方法で処理している場合に限られます。始めた年だけ経費が増え、やめた年には逆に利益が増えます。利益の大きい年だけ前払いする使い方はできません(国税庁 No.5380)。
Q家族を役員にすれば、報酬を分けて税金を減らせますか?
実際に役員としての仕事をしていて、その仕事に見合う額であれば経費になります。名前だけの役員や、相場を超える報酬は認められません。家族の社会保険や扶養も変わるので、税理士や社会保険労務士に相談してから決めてください。
Q「この保険で節税できます」と勧められました。どう判断すればよいですか?
まず、その保障が会社に必要かを考えます。次に、払う時期がずれるだけのタイプかどうか、いつ解約して、その年に経費の多い予定があるかを確認します。解約時に戻る割合や途中でやめた場合の損も含めて、税理士に試算してもらうと安心です。
まとめ
目的は税金を減らすことより手残りを増やすこと。合法の範囲を守り、節税策を効き方で3つに分け、期の始めに期限のある手続きを予定に入れます。まず経費の取りこぼしを点検し、役員の給与と社内規程を整え、払う時期がずれる方法は解約する年から逆算します。決算の3か月前から「見込む・比べる・そろえる・届ける」の順に進め、実行の前には税理士と公式情報で確かめます。
参考リンク
- 国税庁 役員に対する給与(No.5211)
- 国税庁 質疑応答事例(事前確定届出給与:定めどおりに支給されたかどうかの判定)
- 国税庁 使用人賞与の損金算入時期(No.5350)
- 国税庁 役員に社宅などを貸したとき(No.2600)
- 国税庁 使用人に社宅や寮などを貸したとき(No.2597)
- 国税庁 短期前払費用として損金算入ができる場合(No.5380)
- 国税庁 中小企業者等の少額減価償却資産(No.5408)
- 国税庁 中小企業投資促進税制(No.5433)
- 国税庁 中小企業経営強化税制(No.5434)
- 国税庁 給与等の支給額が増加した場合の特別控除(No.5927)
- 国税庁 交際費等の範囲と損金不算入額の計算(No.5265)
- 国税庁 簡易課税制度(No.6505)
- 国税庁 法人税基本通達
- 国税庁 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
- 中小機構 経営セーフティ共済
- 中小機構 経営セーフティ共済の解約
- e-Gov法令検索 国税通則法
この取説はどうでしたか?
みんなの取説 torisetsu.jp / https://torisetsu.jp/manual/corporate-tax-saving-guide/
作成日:2026年11月6日 ※内容は更新されることがあります。最新版は上のURLで確認できます。一般的な情報であり、医療・法律・お金などの判断は専門家や公式窓口にご相談ください。
この取説への質問
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